里山鳥獣害WSの企画・広報過程の記録
WSを開く場合、様々な分野の関係者に来てもらい、幅広く意見を聞く機会とすることが大切である。第1回WSはその点うまくいった。今後のWSやシンポジウムの企画作成の参考となるように、企画を進める上で心がけた点を以下述べる。
企画のきっかけ
今回の企画のきっかけは、昨(2004)年11月に、京都府丹後半島における国定公園新設にともなうシンポジウムの一環として、里山ORCメンバーでもある滋賀県立大学の野間直彦氏の獣害管理の講演が好評だったとの報告を受けたことである。この報告を発信者の宮津市在住の自然系NGOメンバーの許可を得て、里山ORCのメーリングリストに流すとともに、野間氏の獣害管理の話を聞く会を提案した。このメーリングリストには、大井徹氏の新刊書「獣たちの森」の紹介もしており、この中に昨秋話題となっていたクマ害についても多く書かれていたので2月17日の第4回里山学研究会として、お二人の話を聞くことができた。
二人の話は興味深く、関係者だけの話としておくことはもったいないというのが研究会参加者の気持ちであり、聞かせせてもらった話題を膨らませてワークショップ(WS)の企画を検討することになった。
企画趣旨文の作成
関係する多くの人々に来てもらえる企画作成のポイントとして、参加する価値があると思える企画趣旨文を発信することが大切である。
タイトルや講演者名の羅列だけの企画文も多いが、そういった状態での発信を避ける必要がある。趣旨文の中では、そのテーマを選んだ切り口の設定の解説がていねいに述べられ(くどく感じられない程度に少なくする必要はあろうが)、その切り口の流れで講演者の位置づけが簡単に示され、講演者・所属・講演タイトルが企画趣旨と整合した形できちんと示されていることが必要である。
もちろん、どのように会場に行けばよいかが判りやすく示され、できれば申し込み不要で(そのためには会場をそこそこ広くしておく必要があった)・参加無料を明示しておくことが参加しやすさにつながった。
企画の広報
WSのイメージを象徴的に伝えることが可能な絵があると、人々の関心をひきやすい。今回は講演者の一人である大井徹氏の近著「獣たちの森」中に描かれた「クマの傘」の絵をつかわせていただき、フライヤ(ビラ)やポスターが作成された(このホームページでも利用させていただいている)。
これらは、まず関係者への郵送によって広報された。第1回シンポジウムの参加者への案内は効果があったし、保全の会の人々も多く参加していた。また今回は近隣府県庁の鳥獣行政関係の部署へ送付されたため、庁内便を利用しての地方出先機関への本庁からの案内によって、現場にかかわる熱心な職員の参加がしやすかったようである(本庁からの配布物なので参加しやすい)。
また、各種のメーリングリストを通して上記の企画文やプログラムを流した結果、研究者の目に触れやすいいくつかのホームページに案内が掲載された(後述 ※1)。企画文をじっくり読むことが可能なので、幅広い分野の研究者やNGOらが参加するきっかけとなったと思われる。もちろん少数ながら新聞にも案内記事が掲載されたので、関心を持つ一般の人の参加が得られた。
(作業用)ウェッブサイトの立ち上げと事前の論点整理
ウェッブサイトを立ち上げ、企画趣旨文と講演者の要旨(まずは仮の要旨であれ掲載し、WS開催前になって会場配布用要旨を掲載)を掲載した。
・パーツとなる講演者の要旨確保(更新は可、最初はダミーでも可)。最初は仮のものでも、企画者や講演者相互の理解に役立った。
また、ウェッブサイトには、開催のテーマの周辺を理解する基礎的な情報(基本的な書籍や関連するウェッブサイトの一覧、都道府県別の特定計画のウェッブサイト)を作業用ウエッブサイトに掲載した。今回はこれらの情報は公開していないが、会場では具体的な獣害対策情報を記した滋賀県のパンフレットが配布され好評であった。
企画者が、受け取った要旨や、これらの基礎的な情報を元に、事前にワークショップのテーマにかかわる論点を整理した。これらの論点整理は、ワークショップの進行のイメージを持つために有用であった。
ワークショップ終了後のまとめ
討論で出た意見をとりあえずまとめて、作業用ウェッブサイトに掲載した(テープおこしとかすればもっと正確だろうが・・・)。
参加票に多くの人により意見が書かれた。約150人の参加者のうち、131名が参加票を出し、そのうち117名の方の参加票に意見が書かれていた。意見を入力したファイルを事務局の方から受け取り、里山環境の鳥獣害にかかわる様々なかたがたが参加されたことが判った。参加された方の多様な意見は「課題を探る」上で非常に重要な意見になると感じた。全部の意見は紹介できないため、印象に残ったものをバランスを考えてウェッブに掲載した。
講演やコメント、会場における討議、参加票の意見、関連情報から「見えてきた課題」として(1枚ものの4項目の)まとめ案を作成した。
まとめをどうするかは人によって、変わってくる。何が課題として見えてきたのかについて、さらに意見を交わすことができれば、興味深い。
作業用ウェッブサイトを、ワークショップ前に開き、その後も開いていることにより、ワークショップ前にワークショップがはじまり、ワークショップ終了後も、ワークショップが続く状況をつくりだすことができる。
課題として意識されたテーマは、それぞれ次の新しいワークショップやシンポジウムのテーマとなりうる。 課題を見つけ、また新たな視点で次の企画をすすめるという循環をつくることが大切と考える。
大きく複雑な問題であっても、さまざまなテーマのワークショップやシンポジウムがウェッブサイトで発信され、相互にリンク関係を持つことで、全体的な視野ももつことが可能になると考える。