獣害問題が現代里山論に問いかけること
立澤史郎(北大・文・地域システム科学)
1. 獣害問題の3側面
・ 野生動物の生態学と個体群管理(個体/個体群/群集・生態系)
・ 被害認識と社会問題化のプロセス・・・カモシカ食害問題(カモシカ「お犬様」論)
・ 地域社会論・産業論・・・生活の場≠生産の場(林業ボランティアは林業のためならず?)
(それぞれに本質論と技術論,それぞれから解決へのアプローチ)
2.背景にあるべき合意・・「科学的」かつ「民主的」な「解決」
→地域住民の生活・・住民主体の対策・体制(→「対策の内在」)
→基礎研究,フィードバック管理,生物多様性&パーマカルチャー
→技術・制度論だけの問題ではない(暮らしぶり・心持ち・・「被害」意識なければ「問題」なし)
3.里山論(研究・実践)は獣害問題を飲み込めるか?
・獣害文化論
:3側面含めて,長期的・主体的に被害意識を軽減できる体制と技術が必要
→本来集落はそうやって形成されてきたはず(三年寝太郎,権兵衛さん)
→歴史的掘り起こし(人・動物両方)(林学≠林業)
→技術・制度的試行・集積の必要性(特定制度,直接支払制度など)
・ 「身近な自然」論(レクリエーション機能)だけでは対応できない
・ 「保全」論 →「愛護」でなく(利用前提)
→在来&野生の群集維持
→「里山レリック論」(希少種ハビタットとしての評価,田端など)
4.国造り・村作り
・ 「生活の場としての里山」=「鳥獣害と闘いながら暮らす(闘うシステムを内在させる*)集落」を再生できるか?野生鳥獣を利用する国を再生できるか?
(*「三度に一度は追わずばなるまい」or「肉としてのシカ,金としてのシカ,心としてのシカ」TM)
・ 「里山外」にまで責任を持てる(集落・生活空間を超えた)里山論が展開できるか?
(*里山論は奥山論とセットで;奥山あっての里山)